発達障害の僕が「受かる人」に変わった すごい勉強法

序文

そんなものはない。逆に教えてくれ。借金玉『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』を改変した釣りタイトルです。借金玉本を発端に普及したlifehackではなく、供給が不足しているstudyhackの必要性を訴えます。

目次

経緯

無自覚な発達障害者(というか僕)1は自分を定型発達者と勘違いし、自分に本来相応しくないメリトクラシーの基準を当てはめます2。そしてメリトクラシーで勝つために、学校の教育通り普通の人向けの勉強法で勉強します。それでも中学校まで、IQに頼ったパターン認知で表面的に問題を解けます3。オーバーアチーバーで高い業績を示し、過大評価されます。しかし高校でIQが+1σ以下の発達障害者は、意味理解が追いつかずに落ちこぼれます4。失敗体験を繰り返すうちに、学習性無力感で勉強をやめます5。そして勉強しないまま、大学受験の期限6を迎えて落ちます。

原因

「努力」とは「頑張り」のうちメリトクラシーの基準に沿った向きのベクトル成分のことです。「努力できる才能がある」とは、生き方が基準に高い割合で沿っているので頑張りが高い割合で努力に変換される状態です。7普通の人は基準に沿って生きているので、頑張りの大部分が努力になります。

基準からズレた発達障害者の頑張りは、ほとんど努力になりません。業績が上がらない発達障害者の頑張りを、社会は過小評価して普通の人と同じだけ努力しろと迫ります。普通の人と同じだけ努力するために、発達障害者は普通の人より格段に頑張らないといけません。焦って頑張る量を増やしても、合わない勉強法で成績が上がりません。そのうち頑張りが空回りして、心が壊れます。

対策

発達障害者が自分に本来相応しくないメリトクラシーの基準で勝つためには、自分の頑張りを効率的に努力に変換できる自分に相応しい努力術が必要です。

「メリット=IQ+努力」のうちIQがハードウェア・努力がソフトウェアです。現代の技術ではハードウェア自体を改造できません。特殊なハードウェアが性能を発揮できるように、hack8してソフトウェアを最適化しましょう。

発達障害者は性能がピーキーで用途が明確なキャラクターです。ゆえに苦手な土俵を捨てて、徹底して得意な土俵で戦いましょう。

選定

「努力の目利き」は必要。では、どれをどうやって身に付ける?9おそらく頑張って積み重ねた成功体験から、努力術を体系化するしかありません。しかし最初の一歩には、努力術の選定が必要です。誰でもできる努力術を探す方法はインターネットと図書館です。

普通の人は努力術のロールモデルを、親・学校・塾で文化資本として手に入れます。しかし発達障害者は『みんなちがって、みんなダメ』なので、既存の努力術を丸ごと採用しても役立ちません。10いろいろな努力術を探して[^10]、自分に合う部分だけを組み合わせます。やっていきましょう。


  1. 僕は未診断でADHD治療薬を使えなかったせいで、受験競争で健常者より圧倒的に不利だった。『TAKE YOUR PILL』によると、米国では健常者でさえスマートドラッグとしてADHD治療薬を使用してチートしているのに。

  2. 『みんなちがって、みんなダメ』の動画書籍を参照。

  3. kaienの記事この連載を参照。知覚統合が低い聴覚順次型学習者はパターン認知頼りなので暗記(受験)数学止まりだけど、知覚統合が高い視覚空間型学習者は本来の思考(大学)数学まで進める。

  4. 発達障害者は半分AIみたいで、機械学習する。WAISにおける知覚統合が低い発達障害者強化学習は、高校数学で限界を迎える。全知能IQが高い発達障害者DEEP LEARNING(例:わんこら式)で大学受験まで押し切れる。

  5. 僕は未診断の発達障害で生来のストレス脆弱性から、プレッシャーに圧し潰され鬱で勉強できなくなった。その時に精神科を受診していれば、精神薬を処方されて勉強できたかもしれない。「真面目系クズ」なので勉強を怠けても、WAISにおける高い言語理解によって、現代文だけ良い成績を維持できた。

  6. センター試験(と後の共通テスト)に発達障害者への特別措置があり、他の受験生がいない別室と試験時間1.3倍を与えられる。僕は発達障害に無自覚だったので、特別措置を受けられず不利な試験を強いられた。

  7. 「発達が基準に沿ってIQが+1σ~+2σで頑張るだけ努力になる」・「IQが±1σ以内だけど効果的な努力術を使う」の二種類ある。

  8. 高IQでASWDの「浮きこぼれ」であるhackerが、努力術を追求しlifehackを体系化した。

  9. 白熊先生の記事のタイトルをパクった。

  10. 借金玉本の個人的なlifehackも、参考にするものの鵜呑みにできない。

すばらしいメリトクラシー

序文

「学校で努力して勉強すれば高学歴を得られ1、優良企業に就職できて高収入を得られ2、魅力的な異性と家庭を築いて幸せになれる3」ことにして統治する制度をメリトクラシーと呼びます。

この制度は効率的な教育投資で人材を促成栽培する代わりに、教育投資の対象から外れた人材を見捨てます。

目次

前提

「才能(IQ・容姿)4+努力(学歴・資格・職歴)=メリット」で社会的地位を分配することにします。さらに「幼い者を一か所に集めて、同い年でメリットの獲得を競争させる」義務教育5が必要です。産業革命による効率化で職場は危ない機械か静かな机になり、幼い者が仕事の邪魔になりました。そこで幼い者を一か所に集めて隔離する場所を学校と呼び、教育投資を受ける幼い者を子供と呼びます。6学校で一元的に教育することで、努力術の逸脱を抑制します7。人間は毎年一定分だけ発達することにして、効率的に教育投資を行うために年齢によって子供を管理します。同じ暗黙の了解のもとに、静かな机の前に座って抽象概念を扱うべき子供8を選抜するための指標として IQ を考案します。そして効率的に教育投資するために対象をパレートの法則に従って、IQ の発達がバランス良くて中央値μから±2σ以内で全体の 95%を占める子供に限定します9

誰のための制度

メリトクラシーとは、IQ が+1σから+2σの定型発達者「選良」のための制度です。

選良

彼らの職業は知的専門職(インテリ)で、政治的には自由主義者(リベラル)です。彼らは競争のルールを決めた資本家階級の支配者から「選ばれた」人たち(エリート)です。彼らは自分の「地頭10」が大好き。

彼らは自由な競争の必要性と、機会平等の大切さ・結果不平等の正当性を主張します。彼ら曰く、「 IQ+ 努力=メリットを上げれば高い社会的地位につける」。

  • 「人間は実家の太さで階級を決められるべきではない」← 経済資本に恵まれた資本家階級の優位性を削ぎたい。

  • 「それに比べて人間の知能は平等に発達できる」← 知的な親からの遺伝か平均への回帰11で幸運にも IQ に恵まれた自分の優位性を隠したい。

  • 「だからすべての人間に教育を受ける機会を与えるべきだ」← 競争の舞台を整えることで自分の IQ を際立たせたい。

  • 「自分が成功した理由は努力したからだ」← 知的専門職の親や進学校から文化資本12として受け継いだ努力術を隠したい。

経済学の収穫逓増13によって、資本家が経済資本を独占し生産手段を管理して資本家階級を形成したように、知的専門職も IQ に恵まれた遺伝子を独占し文化資本を管理して中産階級14を形成しました15

普通の人

IQ が±1σ以内で定型発達者である「普通の人」は自分の IQ を知る動機と機会がありません。治療が不要な人に、忙しい精神科医16は知能検査を受けさせません。満足できる社会的地位にいる場合は、相応のメリットを持っているはずです。普通の人には「たぶん自分は IQ が+1σくらいで努力した/しなかったから今の社会的地位だし、同じくらい努力した人が同僚だ」17という健康的な認知で十分です。

特殊者

効率化のために教育投資の対象から外された人を「特殊者」18と呼ぶことにします。特殊者のうち、IQ の値が低い方が障害者です。IQ が凸凹の発達障害者と IQ が-2σ以下の知的障害者が「落ちこぼれ」ます。IQ が+2σ以上の人もアンダーアチーバーになって「浮きこぼれ」ます19。治療を必要とするまで敗北した特殊者にしか、精神科医は知能検査を受けさせないので、特殊者しか自分の IQ を知りません。負け組が確定し手遅れになり精神科に来所して、負けて当然の社会を我慢するために精神薬を処方されます。本来の自己を失わせる絶望のソーマ20を。

気づき

メリトクラシー」という単語は産業革命によって階級社会化したイギリスで、社会学マイケル・ヤング『メリトクラシーの隆盛』(1958 年21ディストピア SF 小説22)にて初出しました。そのディストピアとは、「能力測定技術の飛躍的向上により、知能が母体検査でわかるようになり、生まれる段階ですでにどの能力階級に属することになるかが決定され、それにしたがって、学校教育も能力階級とそれ以外の分離によって行われ、それが社会における地位・役割の配分にも直結する、という体制」23 です。その世界観はオルダス・ハクスリー『素晴らしい新世界』24と似ています。『素晴らしい新世界』では、中産階級の「浮きこぼれ」と「落ちこぼれ」が体制に馴染めず、野蛮人の登場によって体制の問題に気づきます。


  1. ほぼ「能力主義」のこと。マイケル・サンデル『実力も運のうち 能力主義は正義か?』が出版された。上梓インタビュー試し読みを参照。

  2. 高 IQ で高学歴でも発達障害なら、コミュニケーション能力も偏重されるハイパー・メリトクラシーには適応できないだろう。学校の人間関係が上手くいかない、就活で不適正検査や面接で落とされる・職場でビジネスマナーが問題になる人もいる。しかし低学歴の私はそれ以前の問題なので、個人的な問題意識の焦点が学歴の獲得にある。

  3. ウェルベック『素粒子』を参照。恋愛市場が自由化された反発で、新反動主義のPick-Up ArtistとINCELが抵抗している。

  4. ダニエル・タメット『天才が語る』がIQ を批判し紹介する多重知能理論でも言語的知能と論理数学的知能しか高く評価されない。

  5. この記事はイギリス史で階級社会を紐解く。契機になった産業革命、初の義務教育フォスター法、「メリトクラシー」「NEET」の造語、日本の学校と職場で鳴るウエストミンスターの鐘。この全てがイギリス発だ。

  6. 『〈子供〉の誕生』。機会の平等の保障が終わった者を成人扱いし、選抜された成人の結果の不平等を死ぬまで正当化する。大学受験に失敗すると人生が終わる理由。

  7. ニューロダイヴァーシティについて、この記事を参照。

  8. この記事によると、知能の高さが必要になる理由は産業革命による近代化。

  9. この発想をパクった。教育が人を後天的に進歩させるなんて幻想で、詰め込み選抜で高 IQ を発見しシグナリングする機能しか果たしていない。ブライアン・カプラン『大学なんか行っても意味はない?――教育反対の経済学』を参照。

  10. 優生思想を持つ選良が、自分の IQ を自慢したいけど炎上したくないときに使う単語。

  11. 平均への回帰により、両親より劣等/優秀な子が一定の割合で生まれる。前者を過保護する封建制度に不満な後者が市民(ブルジョア)革命で再配置を認めさせた。

  12. 社会学ピエール・ブルデューが作った、学力は階層に中立的ではないとする概念

  13. 持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう — マタイによる福音書 25 章 14~29 節「タラントンのたとえ」。

  14. 社会学アンソニー・ギデンズによる定義。労働党アトリー(社会主義)政権+社会学マイケル・ヤング→保守党サッチャー新自由主義)政権→労働党ブレア(社会民主主義)政権+社会学アンソニー・ギデンズと推移した。

  15. 政治学者チャールズ・マレー『ベルカーブ:アメリカ生活における知能と階級構造』(1994)解説を参照。彼は子供の IQ の期待値によって平均への回帰に抗って知的専門職が中産階級化する様子も示している。

  16. 代表的な「選良」の職業で、「特殊者」の病歴を中間管理する権限を与えられている。他の「選良」の職業の例が大学教授で、「普通の人」の学歴を中間管理する権限を与えられている。

  17. ダニング=クルーガー効果と、同じメリット(= IQ+ 努力)の人が同じ社会的地位になるメリトクラシーの原理。

  18. かつて特殊学級と呼ばれた特別支援学級を念頭に、フィリップ・ K ・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』に登場する「特殊者」から拝借した。

  19. ギフテッドは浮きこぼれ、互助を求め MENSA 会員になり、選民思想を強めていく。IQ によるディアスポラゲーテッド・コミュニティを形成する。

  20. ADHD治療薬であるコンサータストラテラは自己の連続性を失わせる。

  21. 労働党アトリー政権が初めて単独政権を形成し、福祉国家に改革し始めた年。ちなみに日本の放送大学の元ネタ、Open University UK はマイケル・ヤングに起草され、労働党ウィルソン政権で設立された。

  22. ハクスリー『素晴らしい新世界』(1932)→オーウェル『1984 年』(1949)→ ヤング『メリトクラシーの隆盛』(1958)→ウェルベック『素粒子』(1998)という系譜。

  23. 映画『Gattaca』と似た設定。平均への回帰を吸収するように効率化した体制で、中産階級が固定化される。傲慢になった中産階級を労働者階級が打倒するという結末。そもそもメリトクラシーは否定されるために造語された。労働者(プロレタリア)革命が待たれる。

  24. タイトルから「新」を抜いた,浅野いにお『素晴らしい世界』という漫画がある。メリトクラシーの敗者である無職・フリーター・限界予備校生が哀れみをもって描かれる。

当事者会に初参加した

目次

序文

僕は発達障害と診断されてから、書籍やインターネットで発達障害一般や自分の適応障害について調べていた。他の発達障害者の様子をTwitterで観測していると、似た特徴を持つ当事者同士で界隈を形成している。同じ診断名でも多様性があり、界隈が乱立しているので、当事者の人物像を一概に把握できなかった。多様な当事者の人物像を把握するために、接触して観察しようと考えた。しかし魅力がない僕はTwitterにいる当事者と交流できない。サークラ前会長に発達障害当事者会への参加を提案された。だから僕は人脈構築済みで出入り自由の当事者会へ行った。

僕が開始定刻間際に会場に着くと、まだ司会者一人しか来場していなかった。平日の夜だったので仕事帰りで遅れてきた当事者が徐々に駆けつけ、最終的には計五人が集まった。冒頭で一人ずつ自己紹介した。参加者全員が男性1で、僕以外の参加者は職に就いていた。僕は自己紹介で、Twitter発達障害者には多様性がありすぎて人物像を一概に把握できなかったので、現実で把握しにきたと伝えた。まず司会者により発達障害者の多様性について講義が始まった。

発達障害者の多様性

司会者による講義

精神発達障害群の中には知的発達障害発達障害があるけど、知的障害を除く発達障害のみを説明する。発達障害の大分類はASDADHD・LDの三種類だ。これらが併存する当事者が多いことを示すために、集合を表す円が重なるベン図を書く。このときASDADHD・LDを表す三個の円は同じ大きさで書かれることが通例だ。しかし併存する実際の人数を円の大きさに反映すると、以下のような画像1のベン図になる。つまりLDがある当事者は少ない。ASDADHDが併存する当事者は、併存しない当事者よりも圧倒的に人数が多い。現に、講義中までに来場していた四人ともASDADHDの併存型だった。

しかしベン図で同じ位置を占める当事者でも、実態は多様性があり異なる。説明のために、ASDADHD・LDそれぞれを原因とする、適応上の問題10項目を問うチェックリスト三枚があると仮定する。チェック項目の点数だけを考えると、当事者は103=1000通りに分類されることになる。ASD9項目・ADHD4項目・LD1項目に当てはまるASD傾向の方が高い当事者もいれば、ASD3項目・ADHD8項目・LD0項目のADHD傾向の方が高い当事者もいる。点数配分が似ていれば、単にASD当事者やADHD当事者と自称して同士として交流を図るだろう。だが似た点数配分の当事者同士でも、どの項目に当てはまるかバラバラだ。ADHD傾向が高い二人の当事者のうち、一人は「書類整理と所持品の管理が苦手」なのに、もう一人は得意である可能性がある。この一項目で二人の共感は崩れるかもしれない。

僕の補足

司会者による講義は良く言語化できていた。説明のために仮定されたチェックリスト三枚は、ASDチェックリストがAQ・ADHDチェックリストがCAARS・LDチェックリストがWAIS-Ⅲ各検査に相当する。チェック項目の点数だけを考えたときの各心理検査の結果例を以下の画像2で載せる。この画像ではWAIS-Ⅲ各検査の点数が載らないため、LDの有無を示すことはできない。

司会者は講義でIQについて言及を避けたので、僕が次項でIQについて言及する。 ※ASD当事者は高IQが多い、またはASD当事者のIQは二極化するという噂は否定されている

他人と比較する指標

僕の病院歴

他の初参加である当事者が病院歴を話したので、もう一人の初参加である僕にも司会者が同じ話題を振った。 僕はIQと学歴の話題を抜きに自分の病院歴について語れない。僕は大学受験を失敗して中堅私立大学へ不本意入学し、適応障害になって不登校になり、自分で疑って精神科へ行って発達障害と診断された。僕は学歴劣等感を抱いていたので、受験失敗の原因をIQのせいにできるか確かめたくて、一軒目の精神科医心理検査結果の開示を要求したが拒否された。心理検査結果が見たくて、二軒目の精神科医に再診断でIQを開示させ、三軒目の精神科で心理検査を受け直して再々診断され、保険適用外の報告書で心理検査結果をようやく知ることができた。2

司会者と問答

僕の病院歴について説明した後、IQと学歴について司会者と問答になった。この問答では司会者の指摘通り僕の思考に欠陥があるので、僕には問答の内容を会話形式そのままでしか表現できない。脳内整理のため、会話内容を勝手に改変する。

司会者「この当事者会では発達障害=能力凸凹+適応障害と定義している。この定義では適応障害がない人を、発達障害者ではなく能力凸凹があるだけの変人と見なす。適応障害がなく無職だけど福祉の必要性を感じていない現時点の貴方を、この当事者会では能力凸凹があるだけの変人だと見なす」

僕「知能の高さ、特にIQと学歴は社会において人間の価値を決める主要な指標だと私は思う」
司会者「貴方は何故そんなにIQと学歴について拘るのか?」
僕「旧帝国大学を院卒した定型発達者の兄と比較されて母親に育てられ、卒業した高校の同期のうち私が一番低い偏差値の大学へ進学したことに劣等感を抱いたから」
僕「先天的知能は出生で決定され当人の自由意志で左右できないので、先天的知能の良し悪しに当人の責任が生じないことを私は理解している」
僕「先天的知能で自分より優る人よりも、良い教育を受けて後天的に知能が高くなることが重要だ。しかし私は大学受験勉強が不完全燃焼で知的になる主要な機会を失った」
司会者「再受験すればよかったではないか?不完全燃焼と言い訳するが、勉強できる時間は十分にあったはずだ。時間はあったのに学力が伸びなかった理由は、貴方に潜在能力(IQ?)がなかったからだろう」
僕「大学受験期間に二次症状の抑鬱であまり努力できなかったことや、世間の価値観に逆らえなかったことなどの言い訳はある。しかし、……(図星なので答えられない)」

司会者「頭の良い人とは誰か?」僕「……アインシュタイン
司会者「頭の良さとは何か?」僕「……(答えられない)社会一般の基準で言えば、IQと学歴が高いことだろう」
司会者「なぜ社会一般基準で答えるのか?貴方には自分の価値観がないのか?」僕「……(答えられない。自分の価値観がない)」
参加者1「多数派の価値観の中に埋没すると安心してしまう。他人と比較する価値観を治せればいいね」参加者2「私にもそんな価値観で自分を苦しめていた頃があった」

僕の感想

僕の価値観はメリトクラシーの競争で負けた時点に縛り付けられたままだ。適応障害になった大学生活は時間の浪費で、全く人間的な成長を遂げられなかった。だから僕には人間を価値づける指標として「メリット=IQ+努力」しか思いつかなかった。僕は分配された社会的地位に不満で、まだ多数派から承認されたがっている。

僕が自分の価値観を持てていないことが浮き彫りになった。場の空気を読めず破壊する適応上の問題を抱えた当事者は僕だけだった。この二点に気づけたことが、当事者会に来た収穫だった。僕の人生が破滅している原因は他人と比較する価値観だろうか?なぜ当事者会ですらコミュニケーションに失敗したのか?

他人と比較する価値観

僕は学歴劣等感に今でも苦しんでいる。他人と比較する価値観を治す解消法は学歴コンプレックスに悩む人のスレPart5に挙げられた解消法の二番目に当たる。他人と比較し順序づける価値観を持つからこそ、学歴劣等感という相対的剥奪に苦しむ。他人と比較しない価値観を持つために、何をすればいいのだろうか?

吉田武『処世の別解: -比較を拒み「自己新」を目指せ-』を読んだことがある。他人と比較する価値観の不合理性を説く内容だけど、頭で理解できても心で受け入れられなかった。メリトクラシーの競争に疲れた若者を学問の道へ誘うために京大の教授が書いた本なので、大学受験に失敗して学問の道が閉ざされた僕の劣等感をかえって刺激してしまう。平成を代表する選抜モデルの曲『世界に一つだけの花』と同じく、京大はメリトクラシーの競争で勝ち組である前提で本当の弱者を騙して冷却するリベラルだ。この本を読んでも、僕は他人と自分を比較して苦しんだままだった。他人と比較しない価値観を持つ方法を今でも僕は探している。

コミュニケーションの失敗

当事者同士の分断

僕がTwitterで観測している限りでは、同じ診断名でも恵まれた者と恵まれない者で立場が分断している。Twitterで活躍できる者は一般に言語性IQが高く自己表現が上手い。彼らは高IQで高学歴であり、人気と居場所があって、支援の求め方が上手い。かわいそうランキングの上位勢が、弱者代表みたいな面して承認を独占している。弱者を名乗る人は弱者なのか?一方で、僕には魅力がなくTwitterでも孤立している。僕がコミュニケーションを図れるくらい似たスペックの者はTwitterに見当たらない。

当事者同士のコミュニケーション不全

発達障害者同士の立場が分断している理由を、「共感」の観点から考えてみる。とりあえず共感を「他人の体験を自分の体験に勝手に置き換えて、当時の自分の感情を想起すること」と定義しよう。健常者たちの能力バランスや体験は平均的で似たり寄ったりだから、相手と自分の思考が異なる可能性を事前に想定しなくていいので、健常者同士は容易に共感し合える。発達障害者と健常者では能力バランスも体験も異なるので、最初から相手を異邦人として扱うことが前提となる。発達障害者は眼前の健常者の体験を、自分ではなくSSTで構築した「一般的な健常者のメンタルモデル」の体験に置き換えてエミュレートするので、自分の感情を想起しないから共感しない。

では発達障害者同士の共感について考えよう。ASD当事者同士では共感し合えるという研究結果が発表されているようだ。そう簡単に共感し合えるのだろうか。同じ診断名の相手だと、相手を自分の同類だと早合点して、つい事前に相手の思考を想定するときに、あるかもしれない差異の想定を枝狩りしすぎてしまう。しかし当事者の多様性は唯一無二で、能力凸凹バランスや不適応体験は当事者によってバラバラだ。唯一無二の発達障害者を、他の唯一無二の発達障害者である自分に強引に置き換えると失敗する。バラバラすぎて「一般的な発達障害者のメンタルモデル」を構築できないので、エミュレートすらできない。結果として能力凸凹バランスや不適応体験が奇跡的に似た極少数の当事者同士で固まり界隈を形成するけど、ほとんどの当事者には滅多に共感できないので排他的になる。極少数の似た当事者同士が固まった小さな大量の界隈が乱立し、界隈同士で揉めているのだろう。

音ゲー手法コミュニケーション

発達障害者同士のコミュニケーション不全を解決するために、僕は獲得できていない価値観だけど、他人と比較しない価値観を導入することを提案する。事前に相手の思考を想定するときに、あるかもしれない差異の想定を全く枝狩りしない。相手を誰か他の発達障害者に置き換えたりエミュレートしない。相手を、世界に一人だけの異邦人として扱う。自分とは異なる能力凸凹バランスや不適応体験を持つ前提で相手を探っていく。世界で唯一無二である相手を誤解なく把握するためには、相手の出力を文字通りに解釈し、相手の思考を細かく類推していくしかない。相手を音ゲーの筐体と見なして、会話で相手の出力を促し、出力のみから相手の思考を類推する。類推が正解する快感を求めて細かくお互いの中身を探り合う過程と多様性との遭遇を楽しむ。

相手の出したワードの中から自分の興味の持てる会話を構築するゲームとして捉えると、楽しいかもしれない。— 承認欲求、自己顕示欲と他人への無関心について

情報源として、相手そのものを使う方法である。自分の考えをとりあえず「ぶちこむ」。そして、相手が受け入れてくれるか、否定してくるかを見ることで、自分の行動を再び調整する。PDCA サイクルを回す行動の組み立て方であり、失敗を前提に行動を組み立てる方式である。— 「親密化サイクル」モデル

相手の人格を無視し類推ゲームと見なしてしまう辺り、僕が他の当事者と友達になる道のりは遠そうだ。


  1. 僕は恣意的に参加者が男性だけの当事者会を選択した。弱者男性と弱者女性とは立場が違うから、似た立場の男性と話したかった。同じ男性となら「メリットを求められる辛さ」を共有できると思ったし、メリットを求める女性に弱者男性の僕が嫌がられることを恐れた。

  2. 僕は診断以外の目的で、精神科に行ったことがない。僕が診断を受けた動機は、発達障害という診断名を貰うためではなく、知能検査を受けてIQを知るためだった。一軒目の精神科医でIQの開示を拒否された(IQが低いことを自覚させ自尊心を傷つけることを避けるため?)だけでなく、僕の考え方を全否定され、紹介書作成の依頼を無視された。僕の不信感は先入観となって、精神医学全体に広げられた。だから不登校のときに初めて診断されても、薬の処方で治療されようとしなかった(し後に三軒も受けて診断を確かめた)。二次障害を投薬で抑えて社会適応せず、人間不信により自宅療養(という体のひきこもり)を選択した。精神薬を飲むか否か選択は自由で、その選択による不利益は自己責任とされる。そのせいか不登校が治らず大学を中退したまま、ひきこもり続けている。

京大NF2018を徘徊した

中堅私立大学を不登校で中退してから引きこもりっぱなしで、刺激が足りないのでお祭り騒ぎを見物したかった。憧れの頭が良い人々を観察したかったし、高卒の学歴コンプレックスで打ちひしがれたかった。 去年も行ったので慣れたせいか、京大の建物や学生に威圧感を感じることはなかった。ちなみに去年は、高機能ASD数学者チューリングがモデルの映画『イミテーション・ゲーム』を観た後、S2S・哲学研究会・KMCなどを回り、銀閣寺と南禅寺を観光して帰った。友達がいない僕は、去年も今年も一人で行った。

出町柳駅から京大への方向を反対に間違えたので、橋を渡って鴨川デルタに向かった。 f:id:halmoth:20200913143532j:plain
飛び石で渡って京大方面へ向かい直した。 f:id:halmoth:20200913143549j:plain

14:00に京大に到着。

  • 公式パンフレットを購入
    去年も行ったし、公式webぺージで前日に調べていたので、地図くらいしか見なかった。

  • 立て看
    吉田寮を弾圧している学長がゴリラ研究の第一人者であったことに因んで、映画『シン・ゴジラ』をもじり『シン・ゴリラ』が実演で描かれていた。到着した直後に通り過ぎるときは輪郭だけ、日暮れに通り過ぎると見事な巨大ゴリラだった。

  • 古本・古レコード市
    コーザー『知識人と社会』を発見して定価の2割の190円で購入した。去年の売れ残りな覚えがある。

  • フリーマーケット
    欲しい物はなかった。昨年に双眼鏡を買った東アジア軍事店が今年も居た。北朝鮮の金一族や中国の指導者のデカい写真に迫力があった。

京大生との会話イベントは心理的負担が大きすぎると思っていたけど、去年に経験して慣れていたのか、拙いながらも(サークラ前会長との会話以外は)自然に話せた。

  • KMC自作ゲーム・音楽・部誌展示 〜どうせテーマなんて誰も見てないんでしょ〜
    DTMで作曲された電子音楽を聴いただけ。シューゲイザーっぽい曲が気に入った。

  • サークルクラッシュ同好会
    関西TV『桃色鶴瓶』に出演していた5人のうち3人が居た。全ての会誌を一部ずつ購入した見返りを口実に、何故ASD当事者が何人か同好会に加入しているのか質問した。前会長によると、「コミュニケーション自体」について言語化して議論するメタコミュニケーションは言語能力の高い一部のアスピーには向いているコミュニケーション方法だから、とのこと。ついでに場違いながら、友達がいないASD当事者の僕が友達を作る方法を彼に質問した。好きな物事(「コミュニケーション自体」など)を追求(メタコミュニケーションなど)している者同士で集まること、他にASD当事者の自助会を提案された。彼らは言語能力が高いが故に高学歴であり、メタコミュニケーションすることでコミュニケーションし同好会を形成している。同じ大学なので言語能力の水準が一定であり大学という拠点があるからこそ同好会が形成されうる。実際に彼と会話してみて、彼は言語能力や気配り能力が僕より遥かに高いことを僕は実感した。彼にLINEグループの参加を勧められたけど遠慮した。他の来客が多くて彼も対応に忙しそうだったので、僕は退散した。彼の理路整然で高速な発言の内容と量を半分程度しか処理できなかったので、ここに書いた彼の発言のまとめの内容が妥当か自信がない。

  • S2Sのパーフェクトさいえんす教室~かがくのちからってすげー!~
    ビュフォンの針実験で三回投げて三回とも交差した。三回とも交差するのは一回も交差しない場合の次に珍しいと係に言われた。僕は条件付き確率をすぐに計算できなかった。去年分は去年に購入したので、今年分の会誌を購入した。

  • 京大ねこだまり 〜京大ねこについて知ろう〜
    S2Sの展示教室と同じ階にあったのでフラッと入った。高機能ASD数学者ドジソン(通称ルイス・キャロル)作の『鏡の国のアリス』から採られた名前の白黒の兄弟猫に投票した。大学構内に猫が生息する大学は一流というイメージが何となくある。大学校内の猫を保護するサークルは敷地が郊外にある主要大学と一部の私立大学で設立されているらしい。

  • それでも。続け!ひろがれ!吉田寮
    電車内の暇潰しに持参していた『ニートの歩き方』著者pha氏が入っていた寮はどれか入場の際に質問したけど知らないとのこと。次の京大テクノ部ライブの存在を前日に知ったのは、pha氏によるTwitterでの言及を発見したからであり、だからこそ23日に来場したのだった。写真展や寮内の録画映像を見ている間、現役寮生とOBで内輪に固まって話し合っていた印象が残った。OBらしき人が「最近は保守政党が強まっているせいか不明だが、あらゆる決定がトップダウン方式で下され強行されている印象だ。吉田寮の閉鎖宣告は予兆であり、吉田寮が最後の砦だ」と話していた。実際、戦時下の思想統制のための法律が最初に適用された対象は吉田寮生の社会主義者で、そこから適用対象が全国へ広がったらしい。100円を寄付して退出した。

f:id:halmoth:20200913143609j:plain
吉田寮まで行くのに構内で迷って右往左往した。30分前から向かったが迷って辿り着くのに開始ギリギリだった。入退出は自由だったので気にすることなかった。

  • 18:00~ CLUB YOSHIDA feat.ELECTRONIC CHILDREN
    500円を寄付して入場した。寮本体と食堂は別入口だったので、生活空間である寮内も見たかったけど食堂しか入れなかった。普通の大学食堂と同じ形だけど木製の造りで、学生が座る机を無くしたような広間が作られていた。いつも広間な状態なのかは知る余地がない。ステージ前の広間で半数がユラユラと左右に揺れて踊っている様子を、僕を含め壁際に並べられた様々な形の椅子に座り組が取り囲んで見ていて、僕も人生に承認されている気分を味わえた。吉田寮の怪しい雰囲気とテクノ音楽が合わさってSerial Experiments Lainに序盤で登場するclub cyberiaを連想した。DJが使うラップトップはMacbookだった。テクノポップな女歌モノに、所々Squarepusherバリのドリルンベースが入った点が気に行った。椅子に座ってASD的ロッキングと足踏みでビートを刻むだけで楽しかった。近くで白人2人組が煙草を吸いだしたので、僕は副流煙を嫌って退出した。帰り際に入口の外で子ども数人が逃げて吉田寮生一人が鬼役で追いかけっこする様子が微笑ましくて良かった。 f:id:halmoth:20200913143623j:plain

19:00に帰路についた。疲れて翌日は寝込んだ。